エアコン、給湯器、ウォシュレットなど、賃貸住宅には多くの「設備」がありますが、その設備が故障した場合、借主へ対応するにあたって、予めしっておくこととは?
民法 第611条
(賃借物の一部滅失による賃料の減額等)
- 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
- 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
解説
後発的不能の場合の減額・解除権発生を定めたもの。
賃料の減額を請求すると一部滅失時にさかのぼって減額されるので、その分賃貸人から返還請求できる。
ガイドライン
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が、2020年4月1日に施行された改正民法第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)に対応する「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しています。
具体例
状況 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
電気が使えない | 40% | 2日 |
ガスが使えない | 10% | 3日 |
水が使えない | 30% | 2日 |
↓上記のいずれにも該当しない場合
状況 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
トイレが使えない | 20% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
エアコンが作動しない | 5,000円/月 | 3日 |
テレビ等通信設備が使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5%~50% | 7日 |
実務的には
事例による計算例
- 9月(30日)
- 賃料:8万円
- 通信設備が使えない:10%(免責3日)
(賃料 × 減額割合)÷ 日数 ×(不具合日数 - 免責日数)
=(80,000円 × 10%)÷ 30日 ×(5日間 - 3日間)
=8,000円 ÷ 30日 × 2日間
=約533円
実際には、これで収まらないことも十分考えられます。
国交省「賃貸住宅標準契約書(R.5.18以降)」では?
色々決めておきましょうという程度のアドバイスがされています。
(一部滅失等による賃料の減額等)
第 12 条 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、それが乙の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用できなくなった部分の割合に応じて、減額されるものとする。この場合において、甲及び乙は、減額の程度、期間その他必要な事項について協議するものとする。
2 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、残存する部分のみでは乙が賃借をした目的を達することができないときは、乙は、本契約を解除することができる。
結論
トラブル発生時は、日頃の人間関係や、苦情への対応方法により、穏やかに解決できるか、大もめするか変わってくるでしょう。