遺言書にどのような赤線が入っていたらどうなる?
遺言書によって自らの最後の意思を実現したいという遺言者が、権限の無い者によって赤線を入れられることで(簡単に?)それが撤回されるか?
今回最高裁で次のようは判決が出た
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- 事件番号 平成26(受)1458
- 事件名 遺言無効確認請求事件
- 裁判年月日 平成27年11月20日
- 法廷名 最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別 判決
- 結果 破棄自判
- 判例集等巻・号・頁 民集 第69巻7号2021頁
- 原審裁判所名 広島高等裁判所
- 原審事件番号 平成26(ネ)1
- 原審裁判年月日 平成26年4月25日
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判示事項
遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例
裁判要旨
遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされる。
- 参照法条
民法968条2項,民法1024条前段
第968条(自筆証書遺言)
- 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
- 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
原告 2002年に死亡した男性の長女 遺言書 1986年「自宅兼病院や預金など遺産のほとんどを長男に相続させる」との遺言書を作成し金庫に保管 家裁での検認 左上から右下にボールペンで斜めに大きく線が引かれ、封筒の上部が切られていた 1審(広島地裁) 「状況から斜線を引いたのは男性と認められる」、「焼き捨てや切断などは遺言書の破棄に当たると言えるが、斜線が引かれた後も文字の判読は可能」、「遺言書を撤回する行為には当たらない」 2審(広島高裁) 1審を支持 |