離婚の方法と公正証書

離婚の方法

主なものには次の方法があり、まず①からはじまり合意できない場合②→ ③へと手続が移っていきます。

  1. 協議離婚
    当事者の協議による合意の上、離婚届を市町村長に届け出る。
    戸籍法による届出(いわゆる離婚届。)が受理されて初めて効力を生ずる要式行為。
  2. 調停離婚
    家庭裁判所の調停手続により調停を成立させる。
  3. 裁判離婚
    離婚しようとする者が離婚の訴えを家庭裁判所に提起し、確定判決を得る。

公正証書の効力、メリットなど

  1. 紛失や偽造されるおそれがない
  2. 高い証拠力を持たせるられる
  3. 裁判せず強制執行できる(要強制執行認諾)
  4. 財産開示請求」がスムーズに行える
  5. 銀行、年金機構等から財産情報を得られる
  6. 法律行為の証書作成の基本手数料(公証人

    《詳細》

    1. 契約や法律行為に係る証書作成の手数料は、原則として、その目的価額により定められています(手数料令9条)。 目的価額というのは、その行為によって得られる一方の利益、相手からみれば、その行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したものです。目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として算定します。
      【法律行為に係る証書作成の手数料】(公証人手数料令第9条別表)

      目的の価額 手数料
      100万円以下 5000円
      100万円を超え200万円以下 7000円
      200万円を超え500万円以下 11000円
      500万円を超え1000万円以下 17000円
      1000万円を超え3000万円以下 23000円
      3000万円を超え5000万円以下 29000円
      5000万円を超え1億円以下 43000円
      1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
      3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
      10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
    2. 贈与契約のように、当事者の一方だけが義務を負う場合は、その価額が目的価額になりますが、交換契約のように、双方が義務を負う場合は、双方が負担する価額の合計額が目的価額となります。
    3. 数個の法律行為が1通の証書に記載されている場合には、それぞれの法律行為ごとに、別々に手数料を計算し、その合計額がその証書の手数料になります。法律行為に主従の関係があるとき、例えば、金銭の貸借契約とその保証契約が同一証書に記載されるときは、従たる法律行為である保証契約は、計算の対象には含まれません(手数料令23条)。
    4. 任意後見契約のように、目的価額を算定することができないときは、例外的な場合を除いて、500万円とみなされます(手数料令16条)。
    5. 証書の枚数による手数料の加算 法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます(手数料令25条)。

      《詳細を隠す》

離婚給付等契約公正証書

離婚に関する公正証書の条項には次のようなものがあり、当事者の要望・必要性に応じてこれらの項目の中から選んで記載する。

  1. 離婚の合意
  2. 親権者と監護権者の定め
    監護権者:子の監護養育をする者。親権と分離して別に監護者を定めない限り、親権者が当然監護養育すべきことになる。
  3. 未成年の子供の養育費
    どちらかが親権者となり、それとは別に、子を引き取って養育する親に対して、他方の親から子を養育する費用として給付されるもの。(親は、未成年の子に対して扶養義務を負っているから。)未成年の子本人も父母に対して扶養料の請求をすることができる。

    1. 養育費の算定
      親は、子が親と同程度の生活ができるように費用を負担する(生活保持義務)ので、両親と子が同居していれば、子のための生活費がいくらかかるかを計算し、これを養育費を支払う親と子を引き取って養育する親の収入の割合で按分し、養育費を支払う親が支払うべき養育費の額を、当事者で決める。(家庭裁判所の算定表
    2. 養育費の額や支払方法等の変更
      そのときどきの子の生活を維持してゆくのが目的なので、離婚後における親や子に関する事情が変わると、これに応じて、その額や支払の方法等を変更できる。
      一切は解決済みである旨の条項を加え、合意の趣旨を明らかにしておく意味はありますが、将来の事情に変動があっても一切変更しないという効果まではない。
    3. 大学卒業時までの養育費(22歳の3月まで)
      「子の監護について必要な事項」(民法766条1項)は、成年に達したときまでとの見解もあるが、大学進学までの合意は有効である可能性がある。
  4. 子供との面会交流
    条項例:「乙(親権を持つ方の親)は、甲(親権を持たない方の親)が丙(子)及び丁(子)と面会交流することを認める。面会交流の具体的な日時、場所、方法等は、甲と乙が、丙及び丁の福祉に十分配慮しながら協議して定めるものとする。」
  5. 離婚給付
    1. 離婚慰謝料
      離婚について責任のある側が他方に支払う損害賠償。双方に責任があるときは、主として責任のある方が、損害賠償の責任を負うことになると考えられ、その額は、精神的苦痛に対する損害賠償で、ほとんどあらゆる事情が考慮されるといってよく、いわゆる相場を見いだすことは難しいく、事案ごとに常識を持って適宜適切に判断するほかない。
    2. 離婚による財産分与
      婚姻中に夫婦の協力によって形成された夫婦共有財産の清算。また、離婚後に一方が生活に困窮することが予想されるとき、支援する趣旨で他方が行う金銭等の給付。慰謝料的な要素もある。財産分与の中に慰謝料を含めて請求もよく、また、慰謝料のみでよい。
    3. 住宅ローン付き不動産の分与
      婚姻中に住宅ローンにより一方の名義で取得した家やマンションを、財産分与として譲渡する例が多い。

      ローン残額を約束どおり支払しないと、自らの負担で支払をするか、それができなければ自宅を失う危険を、契約条項作成時に考慮する。自宅の名義変更すると、ローン残額を一括返済しなければならないのが通常なので、事前に銀行の承諾を得る必要があるが、名義を取得する側に資力があるというようなごく例外的な場合を除けば、銀行は承諾しないので、自宅の名義を離婚時に事実上できない場合があるので、所有権移転登記は債務完済後にすることとし、離婚時には、所有権移転請求権保全の仮登記をする方法がある。

    4. 財産分与と税金
      慰謝料には原則として、贈与税も所得税も課税されないが、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合、過当な部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱(いわゆる脱税)を図ると認められる場合のその離婚で得た財産の額は、贈与によって取得した財産となる(相続税法基本通達9条9-8)。また、不動産を財産分与等で取得した者が所有権移転登記を行おうとする場合は、登録免許税及び不動産取得税が課税される。
    5. 財産分与をした側
      資産を無償で譲渡するが、譲渡資産の譲渡時の価格が取得時の価格を上回って場合、増加分に譲渡所得税が課せられる(特別控除の制度あり)。
      これを知らず財産分与の合意をしたとき、錯誤により無効になることもあり得る(最判平元年9月14日)。
    6. 将来の退職金
      退職金は、給料とほぼ同視でき、夫婦の協力によって得られた財産とみることが可能で、財産分与の対象になり得るが、支給が将来において決定されるので、その金額を一定額として表示することが困難なので、分与方法には、いろいろな考え方がある。
    7. 離婚時年金分割制度
      平成19年4月1日に導入された、厚生年金等について離婚時に婚姻期間中の保険料納付(年金受給権)の記録分割をするには、厚生年金の報酬比例部分の年金額の基礎となる「標準報酬」について、合意か、合意できないときは裁判によって分割割合を決め、一方の請求により、厚生労働大臣が標準報酬の決定を行う制度(合意分割制度)。
      平成19年4月1日以後に離婚した場合で、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録が分割されます。また、請求すべき分割割合は、法律で一定の範囲(上限は50%)に限られており、年金事務所に相談する。
      分割割合の合意は、公正証書によるか、又は当事者の合意書に公証人の認証を受けることが必要とされていたが、平成20年4月1日からは、公証人の認証を受けないでも当事者双方がそろって、又は代理人が合意書を年金事務所に直接提出する方法でよくなった。
      平成20年4月1日から、第3号被保険者期間についての厚生年金の分割制度(3号分割制度)が始まり、平成20年4月1日以後に離婚した場合、婚姻期間のうち、平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間中の厚生年金の保険料納付記録が分割される。分割割合は、2分の1(50%)と一律に決められており、平成20年3月31日までの分については、合意分割制度による。平成20年4月1日以降の分も含めて婚姻期間全体について合意分割を行うこともでき、平成20年4月1日以降の分につき2分の1であるとみなして全体の分割割合を算定することになる。
  6. 住所変更等の通知義務養育費等の支払、子との面会交流、双方の協議などを行うため、双方の住所、勤務先などを知っておく必要があるが、DV等のおそれのあるケースや住所、勤務先などを相手方に知られたくない場合には、その希望により記載する。
  7. 清算条項
    当事者間に、公正証書に記載した権利・義務関係のほかには、何らの債権債務がない旨を当事者双方が確認する条項。
  8. 強制執行認諾
    公正証書の場合、一定額の金銭の支払についての合意と債務者が強制執行を受諾した旨を記載すると、支払が履行されないときは、強制執行が可能で、養育費と離婚給付について活用することができる。(法務省民事局『養育費バーチャルガイダンス2021』)

    1. 民事執行法による保護
      養育費の一部が不履行となった場合、期限が到来していない債権についても強制執行できるようになり、差押禁止債権の範囲も通常の債権(4分の3)と異なり、2分の1と減縮され、従来より強制執行がし易くなった(民事執行法151条の2152条3項)。
    2. 金銭以外の財産の給付の約束
      公正証書によって強制執行をすることはできないが、訴訟を起こせば、容易に勝訴することができる。
    3. 間接強制
      養育費等の扶養義務等の金銭債務は、平成16年法律152号(平成17年4月1日施行)により、直接強制の方法によるほか、間接強制といって、履行されない場合、債権者の申立てで、裁判所が一定の金銭の支払いを命じ、債務者に心理的強制を与え、債務者の自発的な履行を促す制度で、執行裁判所が、支払うべき旨を命ずる(民事執行法第172条1項)。
    4. 債務者に資力がな場合
      債務者が支払能力を欠くときは、間接強制の決定をすることができず、間接強制決定があっても、債務者の申立てにより、間接強制の決定を取り消すことができ、間接強制の決定をするに当たって、相手方である債務者の審尋をしなければならない。また、金銭債権が定期的債権である場合、保護の必要性が高いことを考慮して、一部に不履行があるとき、将来6月以内に期限の到来するものについても、一括して間接強制の申立てをすることができる。この制度については、改正法の施行日である平成17年4月1日以前に成立した扶養義務等に係る公正証書等の債務名義についても、強制執行の申立てができる。
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